生まれたて

7/21

昔近所をバイクで走っていると、布団が道路に落ちているように見えて驚いたことがある。布団との距離が段々と近いてくるとその正体が分かった。犬だった。めっちゃくちゃでかい犬。それが道路の真ん中で寝ていて背中が痒いのか、寝そべったまま激しく寝返りを打って一人(一匹)で遊んでいた。その犬はとてもかわいくて、一目見ただけで穏やかでのんびりな感じが伝わってきた。それから、たまにおばあさんと散歩している(リードがついてない)のを目撃したり、散歩途中でおばあさん同士が井戸端会議を始めてしまい、暇になった犬が布団モードに入っているのを見かけた。やがて飼っている家も分かるようになり、時々そこを通るタイミングで犬小屋の前で寝ている犬を見るようになっていた。

だけど、夏が来る直前にあの家から犬がパタリと消えた。
色々な想像をした。夏は暑いから玄関内に移動したんじゃないかとか、他所に預けられたんじゃないかとか。でも、多分死んでしまったんだろう。犬小屋も綺麗に片付けられていた。大きな犬だったから犬小屋もそれなりの大きさだったけれど、あの家の庭のかつて犬小屋が置かれていたスペースには物悲しさだけが置き去りにされたように見える。

接点なんかほとんどなかったのに犬が死んでしまったおかげで、出会ってから4年くらい経っていることを痛感した。馬鹿な言い方やけど、まさかお前が死ぬなんて一ミリも考えたことはなかった。ただ毎日そこで寝とって、たまに通りすがる俺に姿を見られる。季節が変わってもずっとそうしてると思った。俺の生活のルーティーンとして安定感をくれる、そういう景色やと思ってたなぁ。

でも違うかったな。違うかったけど、年月の経過と成長を思い出させてくれる。色々与えてくれっぱなし。離別にはそういう側面もあって、それぞれに歩みがあったことを思い出させてくれる。今までおつかれさんお前のこと覚えとくわ、って段々忘れられない事ばっか増えてく。


通りすがりでも天国でもどこでもいい、あの犬にまた会いてぇ。